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時空人(号外) Vol.14

TEMBEA PolePole
~のんびり歩こうよ~

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2020年4月30日(木)
編集長:菅原景一
執筆担当:千葉則行
千葉則行 准教授

1.千葉先生からのメッセージ

(執筆:千葉)

今週27日(月)からオンライン授業がついに開始されましたが、順調に受講されてますでしょうか。まさかこのような新型コロナウィルス感染禍から前期授業がスタートするとは驚きで、まったく想定外でした。私自身、オンラインといったタイプの授業を経験したことがなく、「Steam」、「Team」などの新語(?) が飛び交う中、無我夢中の講義資料作成の作業を強いられ、やっと授業開講に間に合ったというのが実情です。

2年生以上の学生は、これまで授業の中でWebClassの体験をしてきているので、さほど抵抗なく準備ができたのではないかと思います。しかし、大学の授業や学生生活を全く経験していない新入生にとっては、暗闇に放り込まれたような不安の中で、オンライン授業開始を迎えたものと思います。私たち教員側もこのことを十分考慮し、授業を展開していくつもりでおります。なにか不安、疑問がありましたら、「CE 進路セミナーⅠ」で紹介される指導教員に遠慮なくお問い合わせください。

また、WebClass に記録される受講利用時間をみると、その受講姿勢が問われるような学生が散見されます。遠隔授業に臨む学生の姿勢として、通常の授業よりも学業に対する学生一人ひとりの積極的,かつ主導的な学習姿勢が必要であることを自覚することが大切です。こんな時期こそ、しっかりと自己管理を行うことができる能力が試される時であり、そのスキルを磨くことが「質の高い生活」を得る唯一の近道なのです。がんばってください。

2.今日の一冊 『盗まれたのは、5ヵ国の思い出』
僕らはまだ世界を1ミリも知らない』(太田英基著 いろは出版 2014年)

(執筆:菅原)

~ 本からの引用 ~


「人を信じる難しさを経験したことはありますか?」

東アフリカを巡る旅、タンザニアでの最終日の話。キリマンジャロを一望できる街からケニアへと向かう途中だった。ターミナルでバスの乗り換えがあったので、アフリカの大地を走るボロバスを一旦降りて、ケニア国境へと向かうバスを探して歩いていた時のことだった。

ふと気づくと、タンザニア人5、6人に囲まれていた。「ヤメロ! ハナレロ!」とすべての荷物を持っていた僕は声を荒げる…が、気づけばカバンのファスナーが開けられていて、そこにあったはずのデジカメが失くなっていた。

(やられた…)言葉にできないほど、哀しさと悔しさがあふれた。ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、そしてタンザニアと日々撮影してきた写真データを失ったからだ。お金なんていくらでもくれてやる。でも、写真という思い出だけは取り戻せないモノだった。僕は一気にタンザニアを嫌いになりそうになっていた。

途中 省略

バスターミナルから警察署まではタクシーで来たのだが、そこまで遠くはなくて歩ける距離だと認識していた。ただ、バスターミナルの正確な位置を把握していなかったので、警察署脇にいたタンザニアの青年に話しかけた。おそらく高校生ぐらいの彼に、バスターミナルでカメラを盗まれて、盗難証明書を取りに警察署に来たこと、もうお金がないからバスターミナルまで歩いて戻りたいことと伝えた。

すると彼は「こっちだよ! ついておいでよ!」と言った。「いや、方向だけ教えてくれればいいんだ。申し訳ないけれど、ついてこないでほしい」。僕は敏感になっていたし、正直タンザニアでは嫌なことが多かったので、これ以上面倒なことに巻き込まれるのはごめんだと思っていた。だから当然、彼の行動を拒否した。

それでも彼は僕についてきた。おまけに彼の友人も一緒だった。つまり、二対一。万が一の時に僕の勝ち目は
低い。「10分歩けば着くよ!」。彼らは笑いながら僕についてきた。周囲に人がいるうちはきっと大丈夫だと、僕は結局彼らと歩き始めた。しかし、バスターミナルは 15 分経っても、20 分経っても、現れやしない。むしろ、全然違う方向に歩いていっている気さえする。周囲の人の数もどんどん少なくなってきた。おまけにタンザニア青年は誰かと電話をし始めた。現地語のスワヒリ語なものだから、僕には内容はわからない。「おい。10分と言っていたのに着かないじゃないか。嘘ついているのか?」と僕が声を荒げると、彼らは答えた。「ハハハッ! 日本人っていうのは時間に細かいんだね!(笑)」。

さすがにこれはマズイ。本当にヤバイ。危険すぎる。このまま建物も何もない山奥の方に進んでいったら、きっと彼らの仲間が現れてボコボコにされて身ぐるみ剥がされるのではないだろうか? いや、彼らだけだとしても闘って勝ち目はない。この旅で痛恨のミスだ。なぜ彼らを警察署で振り切らなかったのだろうか…。そんなことを本気で考えた。

僕は逃げるタイミングを見計らっていた。一刻も早く離れたかった。彼らはフレンドリーに話しかけてきてくれるし、肩を組むぐらいの距離感で接してくるのだが、僕は正直彼らの会話に集中できないし、できるだけ距離をとるように歩いた。いったい、どのタイミングで逃げようか…。そればかりを考えていた。

そう考えていた時だった。目の前に突如目的地としていたバスターミナルが現れたんだ。正直、拍子抜けした。バスターミナル、あるじゃないかと。ちゃんと辿り着いてしまって逆に驚いてしまった僕が、どんな表情をしていたのかは憶えていない。ターミナルに到着した直後、青年が僕に話しかけた。

ほら! バスターミナル、ちゃんと着いたでしょ? 本当のところを言うと、僕もここまで来なくてもよかったんだけれど、君がタンザニアで大切なカメラを盗まれて、イヤな思いをして、それを本当に申し訳なく思ったんだ。きっと君はタンザニアを嫌いになるんじゃないかって。もう二度とタンザニアになんか来たくないと思ったかもしれない。でもね、タンザニア人のみんながみんな、悪いヤツらばかりじゃないんだって。僕はそれを伝えたかったんだ。だから、僕は君をここまで案内したかったんだ。タンザニアを嫌いにならないでほしいんだ。そして、もしよかったら、またタンザニアに遊びにおいでよ! じゃあね、日本人!

彼は、そう言って笑顔で去っていった。僕はその場で泣いた。涙があふれ出た。彼の親切心を終始疑っていた自分をとても恥ずかしく思った。そして同時に、人を信じることの難しさがこれほどなのかと学んだ。

ただ、間違いなく一つだけ言えることがある。彼らがいたから、僕は今でも、またタンザニアに行きたいと素直に思える。タンザニアを嫌いにならなかったのは、間違いなく彼らとの出逢いがあったからだ。

旅先の土地の印象というのは、結局はそこで出逢う人の印象そのものの影響が大きい。僕らは日本に来てくれた外国人旅行者に、タンザニアの彼らのように親身に接することができているだろうか?僕も彼らのように外国人に接していきたい。そして、日本という国を好きになってもらいたいと、そう思う。タンザニアで僕はカメラと写真という大切なモノを失った。でもその代わりにとても大切な経験を得たのだと思う。


また引用が長くなってしまいましたね。今回は、タンザニアの話題ですが、この文章を読んだとき私も涙が流れたかどうかは定かではありませんが、うるっときたことは間違いありません。私は皆さんに旅、特に一人旅を勧めしています。その理由はここに書いてあるとおりです。『旅の印象ってのはそこで出会った人の影響が大きい』と私も思います。そして、一人で旅をすることで人と出会う確率が高くなるんですよ。自分自身が直接人と関わらなければ何も進まないからです。また、その人を信じるかどうか、自分の直感で判断しなければならないので自分とよく向き合う必要が出てきます。直感で人を信じる緊張感…何とも言えないですよ。是非に皆さんにもこの『人を信じる難しさ』を経験してほしいと思います。そして、日本に来てくれる外国人に信じてもらえる日本人になりたいと思います。

編集後記

(執筆:菅原)

今回で本学科の12名の先生方からメッセージを頂戴して皆さんにお届けしたことになります。いかがでしたか? すべての先生からのメッセージを読めていますか?1 回分の内容を読むのに 5 分~10 分、でも毎日続けるのって大変ですよね。どんな取り組みでもいいのですが、毎日続けられるということも一つの才能だと思います。話が逸れてしまいましたが、いろいろな先生がいらっしゃるとお思いませんか?同じ土木をベースとする都市マネジメント学科の先生方ですが、文章の書き方から、紹介されている話題、本やブログ、映画まで多様で面白いと思いませんか?土木、都市マネジメント学科とはそういう学科であり分野なんですよ。学科が受け持つ分野は広く、そこに関わる方々は多様で社会の縮図のようなものです(私が書くのもおこがましいのですが・・・)。そんな先生方の授業を早く対面で受けてみたいと思う皆さんの気持ちはよくわかります。が、もうしばらくお待ちください。これ以上対面での授業開始が延期にならないためにもお互い、行動に気を付けて過ごしましょう。

 
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