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時空人(号外) Vol.9

TEMBEA PolePole
~のんびり歩こうよ~

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2020年4月23日(木)
編集長:菅原景一
執筆担当:山田真幸

山田先生からのメッセージ

(執筆:山田)

仙台に来てもう20年になります.あっという間に20年というのが実感です,多くの人が同じような事を言います.この速さ,それは学生時代に比べての速さです.毎日毎日やるべき事に追われる日々.思い出してみれば学生時代の時の流れのなんと緩やかな事か!という,人生の流れの中の貴重なひと時を,まさに今,みなさん過ごされているかと思います.こんなの後で思うことかもしれませんが.

本の紹介をとのことですが,最近読んだ本も,学生時代から大切にしている本も恥ずかしながら思い当たりませんでした.インターネット出現以前なので大学院まで検索といえば図書館で,本というよりは好きな雑誌のバックナンバーを貪り読むのが読書といえば読書でした.そんな雑誌の残骸が部屋にあるだけ.うむむ,書けない.自身で一番読み込んだ本って何だろう.

教科書だ.必死に何度も見た本,それは教科書,いや正確に言えば参考書.第2希望にギリギリ引っかかってフヌケになった私は大学1年の半年で早くも留年ギリギリ,後期に全単位を修得しない限りもう1年の憂き目にあうことに.超必死だった,フル単フル単.難し過ぎる教科書に絶望しながら,ふと生協で目にした参考書,「よくわかる」の帯に藁をもすがる気持ちで手を伸ばした.結果その本はよくわかった(笑).90年代には珍しいが現代では良くある参考書で,最近まで売っていたらしい.その時初めて参考書を全部読み切るという経験をした.数式にチルダー,チルダーと呪文の様に繰返すチルダー先生の授業はかつての大学では当たり前の学生置き去りの内容で,最後は私を含めて10人ほどしか聴講者がいない絶望的な状況(みんな切った).そんな鬼門の数学をギリギリ通って,化学といいながら量子力学という○○な試験を確か最後にフル単しました.

教科書を読みましょう.いや強調するべきは教科書ではなく,それを読み切ること.大学の授業は様々で中には教科書を使わないものもあるかもしれませんが,それらの良否にはここでは触れません.しかし,一つ言えることは,あと数年もすれば私たち教員はあなたたちの前から消えます.学生時代はもう来ません.来ませんが時代は変わり続けます,新しいことがどんどん出てきます.それを学び取れるかはあなた次第.自分でなんとかするしかないのです.本でも,インターネットの記事でも,論文でも,読み切れますか.学生時代の授業に対する姿勢というのは,そういう所に出てくるのではと,私は考えています.

最近少しうれしい事がありました.2017年11月に 道路橋示方書・同解説Ⅱ 鋼橋・鋼部材編 が改定されました.この改定では部分係数設計法と限界状態設計法が導入され,鋼橋の分野も新たな時代に入りました.大まかにはこの2点が大きく取り上げられていますが,もう一つ,大きな改定がありました.それは従来の非合成桁設計の除外です.鋼桁橋には非合成桁橋と合成桁橋がありますが,非合成桁構造についても合成作用を考慮して設計することになりました.この根拠となる資料の筆頭として私の論文が示方書に掲載されたのです.執筆してから20年の年月が流れました.当時は信用できないといった査読意見がついて一度却下されて再投稿しています.それが今や周知の事実で我が国の設計指針が変わった.もう過去の仕事なので掲載されても私自身には何もありませんが,時代を変える研究に従事できたことは一研究者としてとても嬉しく,誇りに思えております.(わざと難しく書いてます.図書館に行かずに検索できる時代です,この部分読み切れますか?)

少し飛躍がありましたが,最近見たYouTubeで興味深かったものを一つ紹介します.3/18に開催された日本学術会議の公開シンポジウム「低頻度巨大災害を考える」.土木学会他のインター学会で,COVID-19の影響でYouTubeの中継だったのでたまたま見てました.この中の京都大学,河田先生 207_日本自然災害学会「国難となる巨大災害の事前対策」はシビレました.日本は非常に幸せな国?ぜひ見てください.

編集後記

(執筆:菅原)

どこで聞いた話か忘れてしまいましたが、よくわからなくてもとりあえず最後まで読む。それを何回か繰り返して理解するという本の読み方もあるそうです。私は初めから全部を理解できないことの方が多かったので分からない所はほどほどに飛ばしながら何度も読み返していました。今でもそういうことがよくあります。さて、YouTubeによるシンポジウム「低頻度巨大災害を考える」ですが、見ようとして上のリンクをクリック…表示されたのが7時間の映像…さすがにこれ全部は見られんと思って、下側のリンクをクリック発表者ごとに分割された映像が出てきて一安心。山田先生おすすめの講演、「国難となる巨大災害の事前対策」の中で“正解のない問題をどうやって解くのかという教育が必要だ”というところ、教育できるのかはわかりませんが私はそういう力が人間にとって大切なことだと考えて、前職の時から取り組んでいるので共感しました。この講演の時間が16分観ていて意外に長く感じました。映像って便利なんですけど、先述の本のように読み飛ばせないところが難点ですね。この先始まるオンデマンド授業、視聴する皆さんにとっても結構きついかもなーって思いました。長さはまちまちだと思いますが、おそらく平均30分の動画を観切るのは本を読み切るよりも意志の力が必要かもしれないですよ。

 
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