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時空人(号外) Vol.4

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~のんびり歩こうよ~

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2020年4月16日(木)
編集長:菅原景一
執筆担当:泊 尚志

1.簡単な自己紹介

(執筆:泊)

都市マネジメント学科の泊(とまり)です.1年生向けに簡単に自己紹介をいたしますと,皆さんの先輩方(2年生~卒業生)によれば,私は「精密機械のよう」「人間の心がない」,極めつけは「学科のラスボスの感じ」なのだそうです.一応学科教員の中で一番若いのですが….いや,未熟であるがゆえに尖った感じなのかもしれません.一方で「学科のラスボスの感じ」の人と面と向かってそのように言える,その「勇者の感じ」に感心いたしております.

2.今日の一冊:J.S.ミル(著),竹内一誠(訳)「大学教育について」,岩波文庫,2011.

(執筆:泊)

さて,大学生の皆さんにお尋ねいたしますが,大学とは何ですか.また大学で学ぶべきことは何でしょうか.考え方は皆さんそれぞれで構わないかと存じますが,ご自身の答えを持っていないとしたら大学生として寂しいようにも思います.考えたことがない方は,時間のあるときにぜひ考えてみてください.この時空人(号外)Vol.1の書籍紹介で,菅原先生が「考えながら」ものごとに取り組むかどうかの違いを述べられています.大学も同様,それが何なのか,そこで何をすべきなのかを考えているかどうかで,大学生活から得られるものが大きく変わるように思います.

ところで,大学に関する書籍は新書などを含めて数多くあります.その中で今回は「大学教育について」(J.S.ミル著)を紹介いたします.

この書籍は,「自由論」や「代議制統治論」などの著書で知られるジョン=スチュアート=ミルが,1867年にスコットランドのセント・アンドリューズ大学の名誉総長(Lord Rector)に就任した際の講演内容を収めたものです.その序盤で,ミルは次のように述べています:


「大学は職業教育の場ではありません.大学は,生計を得るためのある特定の手段を人々に適応させるのに必要な知識を教えることを目的とはしていないのです.大学の目的は,熟練した法律家,医師,または技術者を養成することではなく,有能で教養ある人間を育成することにあります.

(中略)

有能で賢明な人間に育て上げれば,後は自分自身の力で有能で賢明な弁護士や医師になることでしょう.専門職に就こうとする人々が大学から学び取るべきものは専門的知識そのものではなく,その正しい利用法を指示し,専門分野の技術的知識に光を当てて正しい方向に導く一般教養の光明をもたらす類のものです.

(中略)

基礎的な教育について幅広く考える人々もいます.そのような人々でさえ,ある特定分野の知識を初歩から教えることは大学の役割ではないと言うでしょう.彼らの考えでは,学生が大学で学ぶべきことは知識の体系化についてです.つまり,個々に独立している部分的な知識間の関係と,それらと全体との関係とを考察し,それまでいろいろなところで得た知識の領域に属する部分的な見解をつなぎ合わせ,いわば知識の全領域の地図を作り上げることです.」(「大学教育について」より引用)


大学の役割には,その創成期から不変のものもあれば,時代や地域によって変わるものもあるのかもしれません.しかし,いずれにしても,そこで学ぶ者や従事する者が大学の役割について自らの考えを持っていることが求められているのではないでしょうか.ミルは,専門職においてものごとの原理を追求し把握するためには一般教養教育が必要であることを主張します.自らが進もうとしている専門領域のみに矮小化することなく,大学そして大学で学ぶべきことを包括的に捉えてみましょう.

なお,僭越ながら,私の個人的な答えは,大学とは「哲学の場」であり,大学で学ぶべきことはミルを引用して「知識の体系化」であると,しばらくの間考えてきました.ちなみに,私がこのようなことを考え始めたのは恥ずかしながら大学4年生のとき—研究室に配属されて指導教員と出会ってから—でした.大学生の初期からこのようなことを意識していれば,学部のはじめの3年間で得られたことが変わっていたかもしれません.

学生の皆さんにおかれましては,大学4年間および大学院修士課程の2年間で大学や大学で学ぶべきことに思いめぐらしていただき,「人生に対してますます深く,ますます多種多様な興味を感じ」1)て,「紳士の完成」2)を目指していただきたいと思います.

参考文献
1) J.S.ミル(著),竹内一誠(訳)「大学教育について」,岩波文庫,2011.
2) ジョン・ロック(著),服部知文(訳)「教育に関する考察」,岩波文庫,1967.

編集後記

(執筆:菅原)

さて、今回は何から書いたらいいのか・・・。 「大学は職業教育の場ではありません・・・有能で教養ある人間を育成することにあります。」というミルの言葉は重いですね。その一方で育成する技術者像は・・・という世界もあって、大学で育成すべき能力とはどのようなものなのか、考え続けていかなければならないなと思いました。泊先生は、“大学とは「哲学の場」と述べられていましたが、私の大学院の恩師も「教科書に書いてあることばかり勉強していないで、もっと周りの学生たちと、時には教員と議論をした方がいい」と話されていたことを思いだしました。

皆さんは大学とはどのような場だと考えますか?

 
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